海外で人気の日本車[アメリカ編]
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広大な国土面積を誇り、移動に車がかかせない国・アメリカ。約91%の世帯で車を所有し、2台以上所有する世帯が約60%を占める、世界第1位の自動車保有率の国です。
そんな自動車大国・アメリカは、多数の自国の自動車メーカーが生産を行っているにもかかわらず、新車売上販売台数の約4割を日本車が占める大規模な日本車市場でもあります。
そんなアメリカの交通事情や日本車の普及状況を見ていきましょう。
アメリカの交通事情
1908年に発売されたフォード モデルT(日本の通称ではT型フォード)が大ヒットし、左ハンドル・右側通行を世界の多数の国に定着させたアメリカは右側通行です。
左側通行に慣れている日本人にとってアメリカで車を運転する際は、左ハンドルの車を操作したり、左折の巻き込みを注視したり大変運転しにくく感じるでしょう。
走行方向以外にも日本と異なるルールがたくさんあるアメリカ。「原則として赤信号でも右折可能」「踏切の手前で一時停止してはいけない」「停まっているスクールバスの追い越し禁止」「標識やメーターはマイル表示」など、把握しておかないと追突事故や人身事故に繋がりかねない交通ルールが数多くあります。
アメリカで人気の日本車メーカー
日本をはじめ、世界中で人気の自動車メーカーが数多くあるアメリカ。2022年のマーケットシェアは1位ゼネラルモーターズ(17.0%)・2位トヨタ(15.2%)・3位フォード(13.9%)となっています。毎年ゼネラルモーターズとトヨタのどちらが1位となるか、熾烈な競争を繰り広げています。
そのようにトヨタが強いアメリカであるゆえ、筆者が初めてアメリカを訪れた際は「アメリカなのにこんなにトヨタ車が走ってるの!?」と驚いたほど、街中で多くのトヨタ車を見かけます。
そのほかのトップ10位以内には6位ホンダ(7.4%)・7位日産(6.1%)・8位スバル(4.2%)と日本車メーカーが3つランクインしており、日本車メーカーのシェアは約4割を占めています。
アメリカで日本車が人気の理由は、「品質が高くリセールバリューが高いこと」と「燃費がよいこと」。日本車は頑丈でアフターサービスも充実しているため、コンディションの良い状態を長く保つことができ、手放すときの売値が高いことが特長です。
また、日本車は燃費が良いことでも評価されており、特に近年ガソリン価格の高騰により、ハイブリッド車が支持を集めています。
日本車は中古車も人気
日本車は新車だけでなく中古車も人気です。
日本では走行距離10万キロが車の買い替え目安と認識されており、そのタイミングで中古車として手放されることが多いですね。
しかし、アメリカでは日本のストップ&ゴー走行と異なり、広い国土をほとんど信号で停まることなく、高速走行するという特徴上、車の走行距離数はあまり重視されていません。
さらに、日本の車検は世界でもトップクラスに厳格と言われ、日本車は丁寧に整備されていると考えられています。アメリカ人にとっては、メンテナンスの行き届いた日本車の中古車は質とコスパが高いと認識されているのです。
国産車より信頼度が高い!?日本車
アメリカ国内で自動車販売に強い影響力があると言われる「Consumer Reports」の2022年の調査によると、「自動車ブランド別の信頼性ランキング」で1位トヨタ・2位レクサス・4位マツダ・5位ホンダ・7位スバル・8位アキュラ(北米で展開されているホンダの高級車ブランド)がトップ10入りしています。
アメリカ国産メーカーが多数ある中で、いかに日本車の信頼性が高いかが伺えます。
また、「最も信頼性の高い車ランキング」でもトヨタ・レクサス・マツダ・スバルから7車が選ばれており、その性能の高さが信頼を得ています。
アメリカの人気車種
アメリカで今人気の車種はピックアップトラックとSUVです。
ピックアップトラックは日本国内では馴染みが薄いイメージですが、アメリカでは2022年の新車販売台数のトップ3がすべてピックアップトラックというほど人気の車種です。
アメリカの税制上、ピックアップトラックは他の車種と比べて税金が安いことに加え、家の修繕などを自力で行うことの多いアメリカでは、大小問わず荷物を積めるピックアップトラックが重宝されています。日本の軽トラックに近い役割と言えるでしょう。
ちなみに国内でのピックアップトラックの販売は、ここ近年は「トヨタ ハイラックス」のみでしたが、いよいよ2024年2月に三菱から「トライトン」が販売されることになりました。もしかしたら、これから日本でもピックアップトラック人気に火が付くかもしれませんね。
そしてSUVも大変人気があります。実はアメリカはSUVの発祥地。第二次世界大戦後に、悪路走破性に優れ人も荷物もたっぷり載せられる「ジープ」の4WDワゴンが爆発的な人気を博しました。
ピックアップトラック同様、荷物の積載量が多いSUVにも支持が集まっています。
なお、日本では2000年代以降ミニバンの隆盛により人気が衰退していたセダンですが、アメリカではつい数年前まで「セダン王国」とも呼べるほどセダンが人気でした。
筆者は直近で2018年にアメリカを訪れましたが、「若者もセダンに乗ってる!路上駐車にセダンの車が多い!」と、日本とは異なるセダン人気に驚きました。
現在はピックアップトラックとSUV人気に押され人気が下降していますが、それでも2023年1月〜9月の新車販売台数トップ20以内にセダンが5車種もランクインするなど、根強い人気を誇っています。
アメリカで人気の日本車モデル
2023年1月〜9月の新車販売台数のトップ10には、4位「トヨタ RAV4」(302,831台)・6位「ホンダ CR−V」(262,351台)・7位「トヨタ カムリ」(217,975台)・9位「日産 ルージュ」(211,091台)の4車の日本車がランクインしています。セダン「トヨタ カムリ」以外の3車はSUVで、現在のアメリカのSUV人気を日本車が牽引していることがわかります。
そしてトップ11〜20位には、11位「トヨタ タコマ(元々ハイラックスの北米仕様として発売されたピックアップトラック)」(179,681台)・13位「トヨタ カローラ」(165,693台)・16位「ホンダ アコード(現在日本では販売終了、2024年春から新モデル販売予定のセダン)」(152,202台)・17位「ホンダ シビック」(146,881台)・18位「トヨタ ハイランダー(日本ではクルーガーとして2007年まで販売されていたSUV)」がランクインしています。
「トヨタ カムリ」「トヨタ カローラ」「ホンダ アコード」「ホンダ シビック」はセダンで、アメリカのセダン市場も日本車が支えていることがわかります。
日本の旧車ファンがやきもき?アメリカの「25年ルール」
アメリカの日本車輸入において重要な意味を持つ「25年ルール」。これは「製造から25年以上経過した車は、本来、連邦自動車安全基準に適合しない車であっても輸入できる」というルールです。
「連邦自動車安全基準に適合しない車」の中には右ハンドルの車が含まれており、右側通行のアメリカでは本来日本車のような右ハンドルの車は輸入が禁止されています。
しかし、この25年ルールにより、製造から25年以上経過した右ハンドルの日本車は輸入が可能となっているのです。
そこで人気となっているのが、製造から25年以上経過した日本のスポーツカーなどのいわゆる「旧車」。
アメリカではゲームや映画の影響により、1980・1990年代製の日本のスポーツカーが憧れの存在となっています。特に「スカイラインGT-R」「マツダ RX-7」「日産 シルビアS14」などが人気の的となっています。
アメリカでの人気により、日本製旧車の価格は高騰傾向にあります。その状況にやきもきしているのが、日本国内の旧車ファン。アメリカ市場で旧車の需要が高いことで日本国内でも価格が高騰し、日本の旧車ファンが購入することが難しくなっていると不満の声が上がっています。
近年では円安により、アメリカでの日本製旧車の購入価格がお得になっているので、さらに需要が高まり、日本の旧車ファンがやきもきする状況は長く続きそうです。
アメリカの交通事情や日本車事情を見てきました。
日本において「外車といえばドイツ車」というイメージがあるのと同様、アメリカでは「外車といえば日本車」と言って過言ではないほど、日本車はアメリカの自動車市場で強い存在感を放っています。
ただし、アメリカで販売されている日本車は現地仕様の左ハンドルとなるため、もし現地で日本車をう運転する機会があっても「日本車だから慣れている」と思わず、しっかり交通ルールや操作方法を確認して運転するようにしてくださいね!