メルセデス・ベンツやBMW、アウディを擁するドイツや、洗練されたデザインで知られるフランス・イタリアなど、世界的な自動車メーカーがひしめくヨーロッパ。
「自動車の本場であるヨーロッパでは、日本車はあまり人気がないのでは?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、ヨーロッパの道路環境やライフスタイルに寄り添った日本車は現地で絶大な信頼を獲得しており、特定のモデルや国においては販売台数トップクラスの支持を集めているのです。
本記事では、ヨーロッパの最新交通事情から現地で支持されている日本車メーカー・人気車種まで詳しく解説します。
ヨーロッパの交通事情と人気のボディタイプ
ヨーロッパでどのような車が選ばれているのかを知るには、現地特有の道路環境や交通ルールを理解することが近道です。
日本とは大きく異なる3つのポイントを見ていきましょう。
1. 超高速域での巡航が求められる高速道路
イギリスやアイルランドなどを除く多くの欧州各国は右側通行を採用しています。
さらに大きな特徴が高速道路の制限速度の高さです。
多くの国で制限速度が110km/h〜130km/hに設定されているほか、ドイツの「アウトバーン」には速度無制限区間が存在します。
時速150km/h以上で流れに乗って走ることも珍しくないため、現地で選ばれるクルマには、高い高速安定性と剛性の高いボディ構造が絶対条件となります。
2. 信号のない環状交差点「ラウンドアバウト」
ヨーロッパの街中で頻繁に見かけるのが、円形の交差点「ラウンドアバウト」です。
信号機を持たず、環状内を走行している車両が優先される仕組みで、合流や脱出時にはスムーズなハンドリングと小回りの利く操作性が求められます。

3. コンパクトカーやコンパクトSUVが好まれる街並み
石畳の古い街並みや狭い路地、小ぢんまりとした駐車スペースが多いヨーロッパ都市部では、大型のピックアップトラックやフルサイズSUVよりも、コンパクトカー(Bセグメント)やコンパクトSUVが絶大な人気を誇ります。
なぜ今、ヨーロッパで日本車が評価されているのか?
日本車はかつて「安いが走りが退屈な実用車」と見られることもありました。
しかし、近年の市場環境の変化に伴い、現地ドライバーの日本車に対する視線は大きく変わってきています。
現在、日本車がシェアを伸ばしている背景には、日本車ならではの強みがあります。
「EV一巡」で見直された、ハイブリッド(HEV)
数年前まで欧州では急激なEV(電気自動車)シフトが推し進められていました。
しかし、寒冷地での航続距離低下、充電インフラの整備不足、そして補助金の打ち切りなどにより、現在その勢いは落ち着きを見せています。
そこで改めて現地ドライバーから圧倒的な支持を集めているのが、トヨタをはじめとする日本メーカーの「フルハイブリッド(HEV)」です。
充電の手間がなく、長距離を走っても実燃費が落ちない。
厳しい排ガス規制を軽々とクリアしながら経済性も抜群という「実用性の高さ」が、急速な電気化政策に疲れを感じていた欧州の生活者に受け入れられています。
2. 人件費の高い欧州で効いてくる「総保有コスト(TCO)」の低さ
ヨーロッパでは1台のクルマを10万km、20万kmと長く乗る文化が根付いています。
しかし、欧州は日本以上にメカニックの人件費やパーツ代が高額です。
一度故障すれば高額な修理費用が発生する環境において、日本車の「とにかくトラブルが少ない」「余計な維持費がかからない」という点は強烈な強みになります。
「派手さはないけれど、毎日確実に動き、財布を痛めない相棒」として、実用性を何より重んじるユーザーから絶大な信頼を勝ち取っているのです。
3. 欧州の走りに適応した「日常域での扱いやすさ」
「日本の車は足回りが柔らかすぎて欧州の高速道路では怖い」と言われたのは過去の話です。
現代の欧州向け日本車(ヤリスやキャシュカイなど)は、現地に開発拠点を置き、欧州の石畳やワインディングロードで鍛え上げられています。
欧州車のようなガチガチの硬さではなく、「足回りはしなやかに動くが、高速域でもフラつかない」「路地のラウンドアバウトをすいすい曲がれる」という絶妙なバランスが日本車にはあります。
これが日常の移動で疲れにくさを実感する欧州ドライバーを魅了している実態です。
国別にみる!ヨーロッパで人気の日本車メーカー&注目車種
ヨーロッパ各国における日本車メーカーのシェアや、現地で愛されている具体的なモデルを紹介します。
ドイツ:本場の壁に挑む日本車のスポーツモデル&ハッチバック
メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、フォルクスワーゲンの本拠地であるドイツは、自国ブランドのシェアが非常に高い市場です。
日系メーカーのシェアは10%未満にとどまりますが、その中でも健闘しているのがトヨタ・ヤリスです。
また、新車市場だけでなく「ネオクラシック」と呼ばれる1990年代〜2000年代の国産スポーツカー(日産 スカイラインGT-R、三菱 ランサーエボリューション、マツダ RX-7など)も熱狂的なファンやコレクターから高く評価されています。

イギリス:日産キャシュカイが爆発的ヒットを記録
ジャガーやロールスロイスなど高級車ブランドが多く存在するイギリスでは、全販売台数のうち日本車メーカーのシェアが約15%と高い存在感を示しています。
特に注目すべきは日産 キャシュカイ(Qashqai)です。イギリスのサンダーランド工場で生産されていることもあり、イギリスの新車販売ランキングで総合1位を獲得するなど、国民的SUVとして深く定着しています。
さらに、EV(電気自動車)のパイオニアである日産 リーフも根強い人気を保っています。

イタリア:コンパクトSUVとハイブリッド車が急伸
フェラーリやアルファロメオなど情熱的なスポーツカーブランドを擁するイタリア。
大衆車では自国のフィアットが強い市場ですが、近年ではトヨタやスズキが急速にシェアを伸ばしています。
都市部での扱いやすさとデザイン性を兼ね備えたトヨタ ヤリスクロスやヤリスがトップテン圏内にランクインしており、スタイルと実用性を兼ね備えたコンパクトSUVの需要が高まっています。
フランス:都市部にマッチするコンパクトモデルが人気
プジョー、ルノー、シトロエンといった自国ブランドが圧倒的な強みを持つフランス。
実はトヨタが現地に大規模な製造プラント( Valenciennes工場 )を構えていることもあり、トヨタ ヤリスおよびヤリスクロスがフランス国内の販売上位に安定してランクインしています。
ハンガリー:スズキが圧倒的1位を誇る「スズキ王国」
ヨーロッパの中で最も日本車シェアが高い国の一つがハンガリーです。
ハンガリーにはスズキの主要生産拠点(マジャールスズキ)があり、冷戦終結後の1990年代から国民の足として親しまれてきました。
そのため、スズキはハンガリーの乗用車販売において数年以上にわたりブランド別シェア1位を維持しています。
人気車種にはスズキ S-CROSS(エスクードの派生車)やスズキ ビターラ(日本名:エスクード)があり、街のあちこちで走る姿を見ることができます。

ヨーロッパで人気の高い主な日本車
ここで、ヨーロッパ各地で特に知名度・評価が高い代表的なモデルを整理しておきましょう。
| 車種名 | メーカー | 特徴・ヨーロッパでの評価 |
| ヤリス / ヤリスクロス | トヨタ | 「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」獲得実績あり。抜群の燃費性能と扱いやすいサイズ感で全域で大人気。 |
| キャシュカイ | 日産 | 欧州のCセグメントSUV市場を切り拓いた立役者。デザイン・走り・室内空間のバランスが絶妙。 |
| ビターラ / S-CROSS | スズキ | ハンガリーをはじめとする東欧・中欧で絶大なシェア。四駆性能(ALLGRIP)と耐久性に定評。 |
| RAV4 | トヨタ | ハイブリッドによる高い環境性能とパワフルな走りで、欧州のミドルサイズSUV市場でも好調。 |
| NX / RX | レクサス | スペインをはじめとする南欧・西欧のプレミアム市場で、欧州プレミアムブランドの対抗馬として定着。 |
ヨーロッパの交通事情や日本車事情について見ていきましたが、いかがでしたでしょうか。
ヨーロッパは世界を代表する自動車メーカーが数多くあり、「日本車は人気がない」と言われることの多い地域ですが、車種や国によっては日本車も高い支持を集めていることがわかりました。
ヨーロッパでは強くEV化が推進されていたことから、EV自動車の生産に強くない日本車メーカーは劣勢になると懸念されていました。
しかし、今年に入ってEUが2035年以降にエンジン車の新車販売を禁止するとしていた方針を転換。
これにより「脱二酸化炭素排出のためには、EV以外にハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)など、様々な選択肢がある」との見方が強まり、HVなどに強い日本車にも追い風が吹いたと言えます。
今後、日本車がヨーロッパで躍進できるか、引き続き注目する価値がありそうです。
