イモビライザーの輸入車と国産車の普及率は?防犯・紛失対策について
クルマの盗難防止に役立つイモビライザーは、乗用車をはじめ、軽自動車やバン・トラックなどの商用車にも多く標準装備されています。
国産車の多くは、鍵を挿し込まずドアのロック解除からエンジンスタートまで可能なスマートキーが標準装備され、スマートキーの普及とイモビライザーの普及が同時に進んでいます。
しかし、欧州車などの輸入車は、すでに1990年代から鍵を挿し込んでエンジンを始動するタイプでもイモビライザーを装備するなど、盗難防止対策が進んでいました。
今回はイモビライザーについて、国産車よりも先にイモビライザーを装備した輸入車とその背景を含め紹介します。
イモビライザーとは?
鍵の形状がシリンダーの形状と一致した時にエンジンが始動する従来の鍵に加えて、盗難防止対策を強化するためイモビライザーが装備されました。
イモビライザーは、クルマのコンピューターで管理・登録しているキーIDと、スマートキーの内部または、キーの持ち手部分に組み込まれている「トランスポンダ」に内臓されたキーIDが一致しなければエンジンがかかりません。
ただ単にキーを複製したのみではエンジンがかからない仕組みになっています。
海外ではイモビライザーが義務化
アメリカでは1995年、ヨーロッパの国々(EU諸国)では1998年にイモビライザー装備が義務化されました。
メルセデスベンツやBMWなどのドイツ車やプジョーやルノーなどのフランス車は、1998年以降全車標準装備されています。
イギリスでは1998年10月からの装着で、車種や年式、グレードをディーラーに問い合わせることでイモビライザーの有無がわかります。
アラブ首長国連邦、イスラエル、クウェート、サウジアラビアなどの中東諸国は2000年から、オーストラリアは2001年から義務化されています。
日本は検討段階に留まり、新車販売されている車種の中には、イモビライザーを装備しない車種・グレードがあります。
2000年以前の輸入車にも盗難防止に役立つイモビライザーが標準で装備されるのは、イモビライザーの装備がその国々で義務化されているからです。
国産車のイモビライザーの普及状況は?
国産車にイモビライザーか装備されたのも1990年代ですが、ホンダ NSXやトヨタ セルシオなど、高級車や高級スポーツカーの一部に装備されるのみでした。
2000年代後半から、リモコンキーを操作せずにドアのボタンを押してドアロックを解除し、ツイストノブを回す、スタートボタンを押す方法でエンジンを始動するスマートキーの普及により、国産車へのイモビライザーが順次普及しました。
イモビライザーの注意点
クルマの盗難防止に役立つイモビライザーですが万能ではありません。
以下より、イモビライザーを装備するクルマが狙われる手口について紹介します。
イモビカッター
その名の通り、イモビライザーの機能を無効化します。
本来は、自動車関連業者や鍵業者がキー紛失の際に対応する目的で所持使用された装置ですが、これが窃盗犯の手に渡り問題になりました。
イモビカッターはメーカー・車種別に違いがあるため、海外で人気がある車種や広く普及した人気車に狙いが定められ、特にトヨタ プリウスが狙わました。
現在、プリウスを始めとしたトヨタ車はイモビカッターへの対策が進められています。
リレーアタック
リレーアタックは、スマートキーの発する微弱電波を利用してクルマを盗む手法です。
玄関先にスマートキーを保管している場合、微弱電波を窃盗犯に拾われ、電波を拡幅しながらクルマの近くにいる仲間に電波を送り、ドアロックを解除しエンジンを始動します。
エンジンを切らない限りクルマは走り続けます。
リレーアタックによる盗難防止策としては、電波を遮断する金属の缶にスマートキーを入れて保管することです。
CANインベーダー
スマートキーの電波不要、イモビライザーも無効化するのがCANインベーダーによる盗難手口です。
フロントバンパー裏にあるクルマの制御システムに接続し、不正な信号を送ることでドアロックを解除しエンジンも始動できます。
トヨタ アルファードやレクサス車の盗難被害の多くはCANインベーダーによるものです。
社外品のイモビライザーシステムを含む盗難防止装置を装着することで、CANインベーダーによる盗難被害を防止することができます。
スマートキーを装備していない古い輸入車の方が安心?
現在の輸入車はほとんどにスマートキーを装備していますが、2010年頃まではキーを挿し込んでエンジンを始動するタイプが主流でした。
スマートキーではないため、常に微弱電波を出さないことからリレーアタックなどの被害に遭うことはありません。
窃盗犯はクルマを売却、不正輸出するなどして資金を得ようとします。
人気のあるクルマ、海外で売れるクルマを狙います。10年以上経過した輸入車は故障のリスクも含め、売却に苦労するため狙われる可能性が低くなります。
しっかりメンテナンスされた輸入車は大きな故障のリスクは低いですが、国産車のハイブリッド車、高級車は「売れる」ため狙われます。
イモビライザーキーの紛失に注意
イモビライザー付きのクルマのキーを紛失した場合は、保管しているスペアキー以外は合鍵を作成してもそのままでは使用できません。
外出先の場合、その場からの移動が困難になります。
そういったトラブルを想定し、事前に合鍵を作成してイモビライザーのID登録をしておく必要があります。
鍵のトラブルを扱う専門業者に依頼することで、作成に必要なブランクキーがあればすぐにキーの作成からイモビライザーの登録まで可能です。
純正キーに拘る場合は、メーカーディーラーに依頼しましょう。
ディーラーに依頼した場合、キーの作成に1~2週間程度かかります。
イモビライザー付きのキーの作成は、イモビライザー未装備の場合と比較して費用がかかります。キーの紛失には十分に注意しましょう。
キーの全紛失は鍵業者に依頼
キーを全紛失してしまった場合、合鍵作成までクルマの移動は困難になります。
その際は鍵のトラブルを扱う専門業者に依頼することで、ドアロックの解除から合鍵の作成、コンピューターのリセット、イモビライザーのID登録が可能です。
※一部の特殊車両は除く
依頼する前にはメーカー、車種、年式などわかる限りの情報を鍵業者に伝え、費用総額を確認しましょう。
あらかじめ総額を確認することで、法外な出張料金など請求される心配がありません。
キーを全紛失してしまった場合、ディーラーではコンピューターの交換が必要となります。
国産車でも10万円~20万円の費用がかかります。また、合鍵の作成に1~2週間かかるため、その間クルマを使用できません。
しかし、純正キーに拘る場合は、ディーラーに依頼する方法のみになります。
キーの全紛失には十分に注意し、スペアキーを用意しておきましょう。
少し古めの輸入車の中古車価格が上昇
中古車価格は年々下降していきますが、実は新規登録から30年を目安に中古車価格が上昇する車種が多くなります。
現在、30年前の「ネオクラシック」と呼ばれる年代のクルマに人気が集まっています。
BMW 3シリーズ、ポルシェ 911、フェラーリ モンディアルなど、底値になった後に価格が上昇しているのです。
国産車の日産 スカイラインGTRもその年代です。
ちなみに、その年代はスマートキーではありませんので、微弱電波によるリレーアタックの被害に遭う心配もありません。
古めの輸入車が高い理由
中古車価格は人気によって価格が大きく左右されますが、そのクルマのコンディションによっても価格が左右されます。
30年以上しっかりメンテナンスを行って維持すれば、部品交換も含め、それなりの費用を費やしていることになります。
メンテナンスの費用も加味されてコンディションの良いクルマは高く評価されています。
もう古いからと買取をあきらめている方は、一度自分のクルマの価格を確かめてみると良いでしょう。