オールシーズンタイヤは得?メリット・デメリットと選び方について
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通年を通して使用することのできる全天候型の「オールシーズンタイヤ」。
1年を通して使用できるため購入費用が安いこと、急な降雪にも対応できることなどで近年注目を集めています。
今回はそんなオールシーズンタイヤのメリット・デメリットや選び方などをご紹介します。
オールシーズンタイヤとは?
オールシーズンタイヤとは、夏用と冬用のタイヤの性能を両立させた全天候型タイヤのことで、通年使用できるのが特徴です。
一般的なタイヤは夏用タイヤと冬用タイヤの2種類があります。
夏用タイヤは一般的に装着されているタイヤのことで、冬季以外の舗装路を快適に走行できるタイヤです。舗装路上の水分を効果的に排水できるため、雨の日でも冬タイヤよりグリップ力が高く、スリップを防ぎます。
冬用タイヤは一般的にスタッドレスタイヤと呼ばれ、タイヤの溝が深く、ブロックが細かく配置されているのが特徴です。雪上路面と凍結路面で高いグリップ力を発揮しスリップを防ぎます。
このように夏用タイヤと冬用タイヤは、それぞれの季節に性能を発揮する一方、想定されていない季節に使用してしまうとデメリットとなってしまいます。
そこで注目を集めるのがオールシーズンタイヤです。
オールシーズンタイヤは、夏の晴れた日の乾いた路面から雨で濡れた路面、そして冬の降雪路面でも安心して走行ができる対応範囲の広いタイヤです。
特殊な素材が使用されており、乾いた路面では高いグリップ力によって安定した走行性能を発揮し、濡れた路面では高い排水性によってスリップなどを抑えてくれます。また、浅い積雪や圧雪路であれば、冬の雪道でも走行することができます。
オールシーズンタイヤの寿命
オールシーズンタイヤの寿命は一般的に3〜5年、走行距離にして3万〜5万キロと言われています。夏用タイヤが約5年、スタッドレスタイヤが3〜4年と言われており、オールシーズンタイヤは中間程度の寿命です。
オールシーズンタイヤは特殊な素材を使用しているので、夏用タイヤより若干寿命は短めと考えておくとよいでしょう。
次からオールシーズンタイヤの交換タイミングについて、具体的に見ていきましょう。
スリップサインとプラットフォームを確認する
通常、夏用タイヤの場合はスリップサイン、冬用タイヤの場合はプラットフォームを確認します。オールシーズンタイヤの場合、夏・冬両方使用できるという特性上、スリップサインとプラットフォームの双方があり、両方とも確認する必要があります。
まず、冬用タイヤとしての使用可否を判断するプラットフォームについて、残り溝が50パーセント以下になると表面に露出するようになっています。
プラットフォームが露出した場合、冬用タイヤとして使用することはできません。しかし、スリップサインが露出するまでは、夏用タイヤとしては使用し続けることができます。
さらに、スリップサインの残り溝が1.6ミリ以下になると表面に露出するようになっています。
プラットフォームに加えてスリップサインも露出した場合、これが使用不可のサインとなります。
なお、1.6ミリ以下の状態での走行は法律で禁じられていますので、スリップサインが露出する前にはタイヤ交換をする準備をしましょう。
ひび割れや亀裂、偏摩耗がないか確認する
タイヤは素材のゴムに含まれている油分によってひび割れを防いでいます。しかし、タイヤが古くなると、油分が抜けてひび割れや亀裂が生じやすくなります。
タイヤのひび割れや亀裂は走行中にバーストを起こす危険性があるため、ひび割れや亀裂を見つけた場合は、まだ残り溝があったとしても早急に交換することをおすすめします。
また、長期間履き続けるオールシーズンタイヤは、偏摩耗の進行に気付きにくいという特徴があります。タイヤの点検時は、トレッド表面の摩耗の仕方が均一であるかを確認し、違和感を感じた場合は、近くのディーラーやタイヤショップで点検するようにしましょう。
オールシーズンタイヤのメリット
多少の降雪や圧雪路であれば走行が可能なため、降雪の少ない地域であれば大きなメリットを享受できる可能性が高いオールシーズンタイヤ。その具体的なメリットを見ていきましょう。
1年を通して使用できる
オールシーズンタイヤという名前のとおり、年間を通して使用することができるため、タイヤ交換の手間を省くことができます。
また、突然の降雪時も走行できるため、慌ててタイヤ交換やチェーン装着をする必要がありません。
たとえば、都心部などで突然雪が降ると、カー用品に人が押し寄せて品不足が起こることもあります。こういったケースに備え、通勤や通学で日常的に車を使用する方はオールシーズンタイヤを装着しておくと安心です。
夏用・冬用のタイヤを両方購入するより安い
オールシーズンタイヤは通年で使用することができるため、夏用タイヤと冬用タイヤの両方を購入するよりコストを抑えることができます。
また、タイヤ交換を行う必要がないため、タイヤ交換の工賃や手間を省くことができます。
タイヤの保管場所が不要
オールシーズンタイヤを使用すれば、季節用タイヤの保管場所が不要になります。そのため、自宅の物置やガレージの場所を季節用タイヤが占めることがなくなります。
また、カー用品店やガソリンスタンドなどでタイヤ預かりサービスを利用している人は、タイヤを預ける費用の節約にもつながります。
オールシーズンタイヤのデメリット
オールシーズンタイヤは夏用タイヤと冬用タイヤの中間の性能を持つため、各季節の走行性能は夏・冬専用タイヤよりも劣ります。特に冬の走行に関しては注意が必要です。
夏・冬の走行性能が専用タイヤより劣る
オールシーズンタイヤは、夏用タイヤと冬用タイヤの中間の性能を持っていますが、走行性能はそれぞれの季節専用タイヤよりは劣ります。
オールシーズンタイヤのゴムは、冬でも柔らかさを保つことのできる特殊なゴム素材が使用されており、かつ夏の暑さにも耐えられるような専用設計となっています。このゴムの特性上、転がり性能や燃費は夏用タイヤと比べると劣ります。
また、オールシーズンタイヤとスタッドレスタイヤは、浅い雪道や圧雪路、シャーベット状の雪であれば、走行安定性にそれほど差はありません。しかし、オールシーズンタイヤが寒い冬の雪道から暑い夏にも対応できるゴム素材が使用されているのに対して、スタッドレスタイヤは冬の雪道の走行のみに特化したゴム素材が使用され、雪道特有の路面状況に対応した設計となっているため、降雪量が多くなるとスタッドレスタイヤの方が格段に走行安定性が高くなります。
したがって、降雪量の多い地域や、普段は降雪量の少ない地域に住んでいてもウィンタースポーツに行く機会のある人は、スタッドレスタイヤを装着する必要があります。
凍結路は走行できない
オールシーズンタイヤは暑い夏にも対応できるゴム素材が使用されているため、凍結路のような滑りやすい路面ではスリップしてしまいます。また、ブレーキを踏んでも思い通りに停止することができません。
JAFが行ったテストによると、凍結路を走行し、急ブレーキを踏んだ時の制動距離は、スタッドレスタイヤが圧倒的に短く、オールシーズンタイヤと夏用タイヤはほとんど変わらない長さという結果でした。したがって、オールシーズンタイヤの凍結路でのグリップ性能は、夏用タイヤとさほど変わらないことがわかります。
路面が凍結しやすい寒冷地や降雪日数の多い地域では、スタッドレスタイヤを装着する必要があります。
[参考]雪道での登坂テスト(JAFユーザーテスト) | JAF
オールシーズンタイヤの選び方
オールシーズンタイヤはメーカーや種類によって異なる特色があります。購入する際にはぜひ以下のポイントをチェックしましょう。
ドライ性能
ドライ性能は乾いた路面での走行性能に影響します。オールシーズンタイヤを通年で使用する場合、乾いた路面で使用することが多くなります。そのため、通常の路面でもふらつくことなく走行できるか、急ブレーキをかけた時にしっかり止まれるかなどが重要になります。
ウェット性能
ウェット性能とは濡れている路面でも、タイヤが滑らず車をコントロールできる性能です。
雨で路面が濡れていると摩耗抵抗が少なくなるため、タイヤのグリップ力が低下します。このような状態でも、コントロールを失うことなく安定走行できるよう、排水性が高く設計されている商品を選ぶようにしましょう。
また、ウェット性能の一定の基準をクリアしたタイヤは、日本自動車タイヤ協会(JATMA)によってaからdまでのランクがついています。オールシーズンタイヤを選ぶ際には、このランクも確認してみましょう。
[参考]低燃費タイヤ等のラベリング制度 | 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会 JATMA
耐摩耗性能
耐摩耗性能とは、タイヤの素材であるゴムがどの程度摩耗に耐えて、性能を維持できるかを表しています。耐摩耗性能が高ければ高いほど摩耗に強く、長い期間タイヤを使用することができます。
オールシーズンタイヤは夏用タイヤと比べてゴムが柔らかく溝が多いため、摩耗が速くなりやすい傾向にあります。しかし、最近の商品は接地面を均一化したり、ブロックの剛性を向上したりと工夫されており、耐摩耗性能も改善されつつあります。
静粛性
通常、走行時はタイヤと路面の間からロードノイズ・パターンノイズ・音圧・周波数などの音が発生しますが、静粛性が高いと静かで乗り心地が良くなると言われています。
雪上性能
降雪時に安心して走行することができるよう、雪の上でも蛇行やスリップすることなく走行でき、しっかりとブレーキのかかるタイヤを選びましょう。
通年使用することができ、注目を集めているオールシーズンタイヤ。
ご自身の住んでいる地域の気候や、冬の車の使用用途と照らし合わせて、今後タイヤを購入する際の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。