自動運転におけるメーカーの取り組みと対応車種
(最終更新日:)
交通事故の削減、渋滞の緩和などを目的に、各国の自動車メーカーや政府が官民一体となって進めている自動車の自動運転化。
各自動車メーカーがより高い自動運転レベルと安全性の自動車を開発しようとしのぎを削っており、その技術は年々レベルアップしています。
今回は、国産車・輸入車の各自動車メーカーごとの自動運転技術への取り組みと対応車種について詳しく見ていきましょう。
「自動運転」とは
国土交通省の定義によると、「自動運転」とは「運転者ではなくシステムが運転操作に関わる認知・判断・操作の全てを代替して行い、車両を自動で走らせること」とされています。
自動運転化する目的は「交通事故の防止」「渋滞の緩和」「高齢者や障がい者の移動手段の確保」「CO2の削減効果」「ドライバー不足の解消」などが挙げられます。
自動運転レベルはレベル0から5の6段階に分かれています。
レベル0が「自動運転なし」、レベル1が「運転支援」、レベル2が「部分運転自動化 / ハンズオフ」、レベル3が「条件付き運転自動化 / アイズオフ」、レベル4が「高度運転自動化 / ブレインオフ」、レベル5が「完全運転自動化」となっています。
レベル3以上になるとシステムがドライバーに代わって車両を走行してくれるレベルとなりますが、現状はレベル2までの車が普及している状態で、レベル3の市販車はメルセデス・ベンツの「Sクラス」「EQS」のみとなっています。
自動運転レベル別の各社システム
2024年1月現在、世界で市販車として販売されているのはレベル3までの自動車となり、国産車で販売されているのはレベル2までの自動車となります。
また、2021年11月の法改正により、新車についてはレベル1以上の自動車のみの販売へとシフトされています。
ここでは、現在自動車メーカーが技術にしのぎを削っている自動運転レベル2・3の自動車について各社のシステムを見ていきましょう。
トヨタ
Toyota Safety Sense
カメラとレーダーによって情報を取得し、そのデータをもとにドライバーの運転における負荷を軽減するシステムです。
ウインカー操作を伴わない車線逸脱を警告する「レーンディパーチャーアラート」や、車線を中央走行するようハンドル操作をサポートする「レーントレーシングアシスト」、一定の車間距離を保った追従走行を可能とする「レーダークルーズコントロール」、衝突が予測される場合に警報を発する「プリクラッシュセーフティ」などが搭載されています。
搭載可能車種は「アクア」「ヤリス」「カローラスポーツ」「ヴォクシー」「ノア」「シエンタ」「プリウス」「ハリアー」「RAV4」など、多数の車種・モデルがあります。
ホンダ
Honda SENSING
単眼カメラとミリ波レーダーを使い、常に安全・快適な運転をサポートするシステムです。先行車や対向車、歩行者との衝突を回避、またはやむを得ず衝突した際の被害を軽減させるための支援システム「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」や、誤発進と判断した場合に自動でブレーキが作動する「誤発進抑制機能」「後方誤発進抑制機能」、車線を逸脱することを警告やステアリング操作で抑止する「路外逸脱抑制機能」などが搭載されています。
搭載可能車種は「Nシリーズ」「フィット」「ステップワゴン」「フリード」「ヴェゼル」「シビック」など、多数の車種・モデルがあります。
Honda SENSING Elite
従来の予防安全パッケージ「Honda SENSING」を更に進化させ、自動運転レベル3にまで昇華させたのが「Honda SENSING Elite」。
その技術を搭載した「ホンダ レジェンド」は自動運転レベル3の機能を世界で初めて搭載したモデルとして、2021年3月に法人リースで100台限定販売されました。これ以降、日本国内で自動運転レベル3に対応した市販車は発売されていません。
Honda SENSING Eliteでは、システムが周辺の監視・加減速・ハンドル操作を行い、ドライバーはハンドルから手を放して運転視界から視線を外すことが可能な「トラフィックジャムパイロット」を搭載。
また、ドライバーの目視なしでも車線変更や追い越しが可能な「高精度デジタル地図採用によるハンズオフ走行」、ハンズオフ機能やトラフィックジャムパイロットの作動中にドライバーがシステムからの操作要求に応じなかった場合に減速・停車を支援するシステム「緊急時停車支援機能」などが搭載されています。
日産
ProPilot 2.0
7個のカメラと5個のレーダー、GPS、3D高精度地図データなどを活用して自車の位置の把握を行いながら、周囲の車の動きをリアルタイムで検知するシステムです。
衝突回避や快適な乗り心地の維持、駐車時の自動制御などの様々な機能があります。その中でも「ProPilot 2.0」の特徴は、高速道路の同一車線内など一定の条件下において、ハンズオフ走行できることです。
搭載可能車種は「サクラ」「デイズ」「リーフ」「ノート」「エクストレイル」「キックス」「セレナ」など多数の車種・モデルがあります。
スバル
アイサイト・アイサイトX
3個のカメラとレーダーによって、常に安全・快適な運転をサポートするシステムです。スバルの算出によると、アイサイト搭載車の追突事故発生率はわずか0.06%となっており、国内カーメーカーの死亡・重傷事故数の平均を大きく下回る安全性を誇ります。
出会い頭、前方の車の急停止、夜間に見えづらい歩行者など、衝突事故の起こりやすいシチュエーションでもブレーキ制御を自動で行い、衝突を回避するシステムや、後方の衝突回避システム、アクセルの踏み間違いによる急発進を制御するシステム、渋滞時に一定の条件を満たすとハンドルから手を離すことが可能なハンズオフ機能(アイサイトXのみ)などが搭載されています。
アイサイト搭載可能車種は「レイバック」「レガシィ アウトバック」「インプレッサ」「フォレスター」「SUBARU BRZ」など、アイサイトX搭載可能車種は「レイバック」「レガシィ アウトバック」「レヴォーグ」「WRX S4」となっています。
マツダ
i-ACTIVSENSE
様々な運転環境でドライバーの認知・判断・操作をサポートし、事故のリスクを最小限に抑えるシステムです。
走行中の衝突回避のサポート、衝突時の被害軽減を図る「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」、ペダルの踏み間違いによる急発進を抑制する「AT誤発進抑制制御[前進時][後退時]」、交通標識の見落としを防ぐ「交通標識認識システム」、一定の車間距離を保った追従走行で運転者の負担を軽減する「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール」などの機能が搭載されています。
i-ACTIVSENSE搭載可能車種は「MAZDA2」「MAZDA6」「MAZDA CX‐30」「MAZDA CX‐5」「MAZDA CX‐8」「MAZDA ROADSTER」など多数の車種・モデルがあります。
メルセデス・ベンツ
DRIVE PILOT
現在、自動運転レベル3の市販車を唯一販売しているのがメルセデス・ベンツ。
高速道路の一定区間や交通渋滞時に、最高時速40マイル(約64キロ)の範囲内で自動運転するシステムで、ドライバーはハンドルから手を放して運転視界から視線を外すことが可能な「DRIVE PILOT」を搭載しています。
なお、このシステムはサブスクリプション方式となっています。
この自動運転レベル3のDRIVE PILOTが搭載可能な車種は「Sクラス」と「EQS」です。
BMW
360°SAFETY
3眼カメラと最先端の画像処理プロセッサーを用いて、常に安全・快適な運転をサポートするシステムです。
2019年7月に発売された3シリーズからハンズオフ機能を搭載しており、当時は日本国内で初めてハンズオフ走行可能な車種となっていました。
高速道路上での渋滞時に一定の条件下でステアリング操作を自動で行う「高速道路渋滞時ハンズ・オフ・アシスト機能」、長距離や高角度視野での周辺危険予測を行い危険を回避する「衝突回避・被害軽減ブレーキ」、見通しの悪い路地や駐車場の出口などでの視認性を高め、快適かつ安全なドライブをサポートする「トップ・ビュー+サイド・ビュー・カメラ」、死角になる左右後方の車両や追い越し車線上を急接近してくる車両を認識して運転者に警告する「レーン・チェンジ・ウォーニング」などが搭載されています。
BMW360°SAFETY搭載可能車種は「3シリーズ」「X5シリーズ」「X3シリーズ」「X6シリーズ」など多数の車種・モデルがあります。
アウディ
セーフティ&アシスタンスシステム
レーダーセンサー、サラウンドカメラなどを用いた、様々な危険から搭乗者を守り抜くための安全装備や、運転を快適にサポートするアシスタンスシステムです。
交差点などで前方を横切る車・死角を並走する車・対向車・後続車などを検知して衝突回避をサポートするシステム、衝突などの緊急時に被害を最小限におさえるシステム、駐車スペースを感知した駐車のサポートシステム、出庫時に後方衝突の危険を警告するシステムなどが搭載されています。
セーフティ&アシスタンスシステム搭載可能車種は「A1シリーズ」「A3シリーズ」「A8シリーズ」「Q2シリーズ」「Q3シリーズ」など多数の車種・モデルがあります。
テスラ
Full Self-Driving
8台のカメラと強力なビジョン処理により、360度の視界と最長250mまで先を視認し、さらに前世代のシステムと比べて40倍以上の処理能力を持つ車載コンピューターハードウェア3が組み合わさって、最先端の安全運転テクノロジーを提供しています。
視覚の悪い交差点や予期せぬ割り込みなどを検知する「フォワードフェーシング サイドカメラ」、車線変更や高速道路での合流の際に役立つ「リアフェーシング サイドカメラ」、車線変更を提案し、速度の遅い車やトラックの後ろにとどまらないよう調整して目的地までのルートを最適化する「ナビゲート オン オートパイロット」など、独自の様々なテクノロジーが搭載されています。
テスラでは、全ての車両に安全運転テクノロジーが搭載されています。
自動車メーカーだけじゃない!テクノロジー企業で激化する自動運転技術開発
自動運転技術の開発は自動車メーカーだけでなく、各国のテクノロジー企業でも盛んに行われています。
現在、市販車の販売は「一定条件下において、すべての運転操作をシステム側が行うものの、緊急時には運転手が運転操作を担う」とする既定のため、自動運転レベル3までとなっています。
しかし、バスやシャトルバス、タクシーなど公共性の高い車両ににおいては「限定領域下においてシステムがすべての運転タスクを自動で行い、ドライバー不在でも自動車が走行するようになり、ほぼ完全な自動運転が可能」とする自動運転レベル4の車両が既に実証実験され始めています。
では、各国での自動運転への取り組みはどうなっているのでしょうか。先進メーカーが手掛ける対応状況について見ていきましょう。
アメリカは自動運転タクシーが実用化
IT大国のアメリカでは、やはりモビリティ分野にも積極的に参画しています。
グーグル系企業・ウェイモが2018年12月、セーフティドライバーが同乗した自動運転タクシーサービスを有償で開始しています。
2020年10月にはセーフティドライバーなしでのサービス提供も一般向けに一部開始しています。
中国は自動運転バスがデビュー
自動車先進国の中国では、ネット検索大手企業の百度(バイドゥ)が2020年9月、重慶で自動運転レベル4のシステム搭載のバスを中国で初めてデビューさせました。
また、ライドシェア最大手企業の滴滴出行(ディディ)もすでに上海で自動運転レベル4のシステム搭載のタクシーサービスの検証を開始しています。
ドイツは自動駐車システム「自動バレーパーキング」を開発
自動車産業の歴史の長いドイツですが、近年はEV化と合わせ先進技術にも力を入れています。
ダイムラーとボッシュが、大規模な無人の駐車場内などで車両が自動走行し、空いている駐車スペースに自動駐車するシステムで自動運転レベル4にあたる「自動バレーパーキング」のシステムを開発しており、すでにメルセデス・ベンツ博物館の駐車場で導入されているほか、ドイツ国内の空港でも導入開始する見込みとなっています。
また、シャトルバスは自動運転レベル4の車両が様々な企業から開発されており、トヨタ「e-Palette」、アメリカ・GM Cruise「Origin」、フランス・ナビヤの「ARMA」、フランス・EasyMile「EZ10」などが開発されています。
各国・各自動車メーカーがしのぎを削り、より高いレベルの自動運転システムを創り上げようとしている現在。
公道を走行するための法整備や、万が一事故が起きた際の責任の所在など、より高度な自動運転システム搭載車が市販されるようになった場合への準備も課題となっています。
高齢者運転による痛ましい事故の防止や、都市部の深刻な渋滞など、自動車にまつわる様々な問題が解決できるよう、自動運転技術の向上に期待したいですね。