個性的な車がつくられなくなった理由とは?
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「今の車は昔に比べると個性的な車がない」と言われる近年。確かに国産車も輸入車も似たようなデザインの車が多い印象を受けます。
そのように車の飛びぬけた個性が見られなくなってしまったのには、さまざまな理由があるようです。それは一体どのような理由なのでしょうか。
また没個性と言われる現在においても、独自のコンセプトで個性的な車をつくり販売を続けているメーカーや車種もあります。そんな個性的な国産車や輸入車もご紹介していきます。
今の人々は車に何を求めているのか
昔は車は走りを楽しむもの、そもそも所有することにステータスがあるものとして、単なる移動手段以上の意味を持っていることがありました。そのため、コストがかかったり多少不便な点があったりする車でも、デザインがかっこいい、走りがパワフルなどそれ以上の魅力があれば需要がありました。しかし現在は人々が車に求める性能・特徴が変化しています。
まず、消費者が重要視するのは「燃費」。昔は1リッターあたりの燃費は4km~9kmの車もザラにありましたが、今はハイブリッド車を中心に燃費性能が格段に上がっており、「トヨタ ヤリス HYBRID X 2WD」は36.0km/L、「トヨタ アクア B 2WD」は35.8km/Lなど、30km/Lを超える車も続々登場しています。ハイブリッド車などの燃費の良い車は、非ハイブリッド車より購入価格が少し高くなっていることが多いですが、ガソリン代を格段に抑えることができるため、走行距離が長い人にはお得になると言えます。
次に「積載量」。1990年代初頭まではセダンが主流でしたが、90年代後半になると「家族全員が乗れて荷物も積める」というステーションワゴンがブームとなりました。その後、さらに荷物も人も乗せられる大容量スペースのミニバンが流行しました。現在では、少子化などの影響で定員人数が7、8人となっているミニバンほど座席は不要となり、「荷物がたっぷり詰めて走行しやすい」SUVに人気が集まっています。
そして「安全性」。衝突事故時の保護性能など安全基準は年々厳しくなっており、メーカーはそれを満たす工夫をして車を生産しています。また、高齢者運転による事故が社会的問題になっていることなどから、ASV(先進安全自動車)搭載の車を積極的に選択するなど、消費者も車の安全性への意識が高くなっています。
個性的な車がつくりにくくなった原因
昔の車のようにデザインや性能に強い個性のある車が製造しにくくなった原因には、前述のように時代が進むにつれて様々な規制が設けられたり、人々が快適性を求めたりするようになったことがあげられます。詳しく原因を見ていきましょう。
安全基準が厳しくなったから
現在の車は衝突安全の基準を満たして造る必要があるため、ボディ骨格の構造や形状が限られてしまいます。また、どこかのメーカーが優れた構造やデザインを開発すると、他メーカーもそれに追従していくため似たようなデザインになりがちです。
燃費や高速安定性が重視されるようになったから
昔は「燃費なんてなんのその」と言わんばかりのスポーツカーなども人気を博していましたが、現在の車はいかに燃費を良くするかが消費者のポイントとなっています。
また、昔の車は時速100キロでも十分とされていましたが、今の車は時速180キロまで出る車も珍しくありません。
燃費の向上と高速安定性を備えるためには、空気抵抗を抑えるような設計にする必要があります。空気抵抗を抑える設計を念頭にデザインを行うので似たようなデザインになりがちです。
輸出することが前提で車が造られるようになったから
今ほど車の輸出が盛んではなかった昔は「自国で製造した車は自国の人が乗りやすければよい」という発想でつくっていたため、その国の独自性が表れたデザインの車が製造されていました。
しかし、各国ともヨーロッパ・アメリカ・日本など様々な国への輸出が盛んになり、輸出先でヒットする車種が出てくるとその車を参考に新しい車を製造し、また輸出するようになります。それを繰り返し、幅広い国の人に受け入れられる車を製造しようとした結果、デザインが似てきてその国らしさ・そのメーカーらしさが出しにくくなりました。
メーカーが消費者の好みを正確に把握し、それに合った車を生産するようになったから
現在でいえば、世界中どのメーカーも、クロスオーバーSUVのラインナップを拡充しているように、最近は各メーカーがほぼ同時期に似たような車を新規発売・フルモデルチェンジ発売することが数多くあります。これは車のニーズの市場調査能力が高まり、複数のメーカーが同じ市場を狙って、同時期に商品開発を進めることが多いからです。
旧車の復刻版や個性的な車のラインナップ
その国やメーカーの独自性が表れた時代の車は、今は旧車としてその個性的なかわいさ・かっこよさは今でも人気を博しています。
そして現代、性能は現代の車の基準にアップデートしつつ、旧車のモデルのデザインを再現した復刻版やレトロデザインの車も続々リリースされています。また、現代向けにデザインされた車のなかにも個性の光る車はもちろんあります。その一例を見ていきましょう。
国産車
ランドクルーザー70/トヨタ
悪天候時やオフロードなどの悪路でも走行可能な頑丈さを極めたモデルで人気を博し、1984年から2004年まで販売されていた「ランドクルーザー70」。
2014年に再販されると、月200台受注見込みのところ、復刻してから1ヵ月で3,600台を受注する大騒ぎとなりました。現在でもオーストラリアで販売されており、今年(2023年現在)また日本でも再再販する見込みです。
ジムニー/スズキ
エクステリア・インテリアパーツメーカーのDAMD(ダムド)が「ジムニーJB64型」用のボディキット「the Roots」を発売。そのクラシックなデザインは、初代ジムニーLJ10型のオマージュとなっています。フロントグリル・フロントバンパー・リアバンパー・ホイールなどのパーツをこのキットのパーツに交換することで、ファンも思わずうなってしまう仕上がりの初代ジムニーのような外観になります。
ビュートストーリー/光岡自動車
1993年の発売以来、コンパクトな英国車風のデザインで人気を博してきた「ビュート」。ベース車両には「日産 マーチ」が使用されてきましたが、マーチの販売終了に伴い、2023年秋より「トヨタ ヤリス」へ変更され、車名も「ビュートストーリー」となります。クラシカルな外内装を持ちながらも、ベースはヤリスであるため、快適に運転することができます。
N-ONE/ホンダ
他にない個性的なデザインやカラーリング、コンパクトさから人気な「N-ONE」。台形のような車体と、丸めのヘッドライトがかわいらしいです。カラーリングは単色とツートーンがあり、色でも個性を発揮することができます
外車(輸入車)
スーパーセブン1600/ケータハム
スーパーセブンはイギリスのロータス・カーズが1970年代半ばまで製造していた「ロータスセブン」が原型。その後、ケータハムが製造権を継承し1957年に発表、現在も製造されています。クラシックでレトロな内装とレザーの質感が特徴です。
フィアット500 クラシケev/フィアット
ルパン三世の愛用車として有名な「フィアット500」。愛知県名古屋市にある私設博物館「チンクエチェント博物館」が保有する、1957年から1975年に製造されたフィアット 500(チンクエチェント クラシケ) を、イタリア・カロッツェリアでEV車に修復し販売されました。
ミニ・リマスタード/DBA
「クラシック ミニ」をイギリスのデビッドブラウンオートモーティブ社によって現代に蘇らせた「ミニ・ リマスタード」。外観はほぼそのままに、パーツは現代の路上環境に合わせてフルビルドされています。また、エアコン・パワーウインドウなども装備されライトもLEDに。往年の外観を楽しみつつ安全走行が叶います。
ミニと言えばカスタムパーツが豊富で、個性的な車両にできることも人気の理由の1つですが、このミニ・ リマスタードもボディカラーやホイールやシートなどをカスタムオーダーすることが可能です。
グランドワゴニア ワゴニア/ジープ
1984年に発売され、革張りシートやエアコンなどの快適装備や遮音性などを備えたプレミアムSUVの元祖「グランドワゴニア」。2021年に復活し、オリジナルデザインを各所にモチーフに用いながらも、現代的なデザインと性能を持つプレミアム大型SUVとして「グランドワゴニア」と「ワゴニア」が発売されました。
カングー/ルノー
国産車のミニバンとは一線を画す個性的なデザインが大人気の「カングー」。丸みを帯びたボディと鮮やかなカラーリングが目を引きます。価格も国産車並みとお手頃です。特に日本で大変人気があり、毎年「ルノー カングー ジャンボリー」というカングーファンが集結するイベントが開催されています。
また、メルセデス・ベンツからもカングーの骨格をベースにした「シタン」が発売されています。
昔と比べて個性的な車が造られなくなったと言われる昨今。安全性や環境性の観点から特徴的なデザインの車が造りにくくなっているのは事実ですが、今でも個性的な車造りを行っているメーカーがあることもおわかりいただけたと思います。
ぜひ、個性的なお気に入りの車を見つけてみてください!