海外で人気の日本車[ヨーロッパ編]
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自動車大国・ドイツをはじめ、イギリス・イタリア・フランスなど、名だたるカーメーカーを有する国が数多くあるヨーロッパ。
各国、欧州メーカーの車のシェアが高く、日本車メーカーのシェアが低い印象があるヨーロッパですが、その中でも人気の高い日本車とはどのようなメーカー・車種なのでしょうか。
そしてヨーロッパの中でも日本車の人気が高い国はあるのでしょうか。
そんなヨーロッパの交通事情や日本車事情を見ていきましょう。
ヨーロッパの交通事情
イギリス・アイルランド・マルタ以外の国はすべて右側通行となっているヨーロッパ。各国の細かい交通ルールは異なるものの、ヨーロッパの右側通行の国の共通ルールは右方優先です。自分のいる道の方が大きな道路であったとしても、右の道に停止線がない限り右方優先となります。
また、高速道路の制限速度は110〜130kmの国がほとんどで、日本よりも制限速度が速い国が多くなっています。
制限速度が特に高い国としては、ポーランド・ブルガリアで140km、ドイツ・イタリア・オランダ・オーストリア・ハンガリー・チェコ・クロアチアなど多くの国で130km、ベルギー・スペイン・ポルトガル・スイスなどで120km、そのほかいくつかの国で110㎞・100kmとなっています。
そして、ヨーロッパの高速道路でひときわ有名なのがドイツの「アウトバーン」。その一部区間では、制限速度が無制限となっており、時速200km超えの車がバンバン走行しています。おそるおそる時速150km程度で走っているとどんどん追い抜かれてしまう、という世界だというので驚きです。
しかし、日本の高速道路より幅員が広く舗装も滑らかで、各々の車が交通ルールを厳格に守っているため、アウトバーンは実は大変走りやすい道路となっています。
そして、ヨーロッパをはじめ、世界各国に設置されているものの、日本にはほとんどないのがラウンドアバウトです。ヨーロッパ発祥の環状交差点の一種で、3本以上の道路を円形スペースで接続した交差点のことです。信号や一時停止がなく、一方通行で環状部分を走る車が優先されます。
有名なものにパリの凱旋門を円の中心として、12本の道路が接続したラウンドアバウトがあります。事故が少なく、車の流れがスムーズになると言われるラウンドアバウトですが、走行ルールを把握していないとかなり戸惑うことになります。
もしヨーロッパで車を運転する場合は、道路を走行する前に事前にルールを調べておきましょう。
ヨーロッパで人気の車種
二酸化炭素排出量削減のため、2035年までに内燃機関搭載車の生産が実質禁止になるヨーロッパ。各国でもEV(電気自動車)の購入補助金を提供するなど、電気自動車へのシフトが推進されています。
そんな背景のあるヨーロッパで、2023年1~8月の新規販売台数を見ていくと、第1位はミドルサイズSUVのEV「テスラ モデルY」で、やはりEVが人気であることがわかります。
第2位は小型ハッチバックの「ダチア サンデロ」。日本ではあまり知られていない自動車メーカーですが、ダチアはルーマニアの自動車メーカーです。
第3位はコンパクトSUV「フォルクスワーゲン T−ROC」、第4位は小型ハッチバック「プジョー 208」、第5位は小型ハッチバック「オペル ヴォグゾール・コルサ」、第6位はコンパクトカー「ルノー クリオ(日本での販売名はルーテシア)」、第7位はコンパクトSUV「トヨタ ヤリスクロス」、第8位はコンパクトカー「フォルクスワーゲン ゴルフ」、第9位はコンパクトカー「アバルト フィアット500」、第10位はミドルサイズSUV「ダチア ダスター」となっています。
狭い道路、狭い駐車スペースが多いヨーロッパは日本と同様、小型車やコンパクト・ミドルサイズSUVが人気となっているのがわかります。また、日本ではなじみのない自動車メーカーや車種の人気も高く、いかにヨーロッパ産の車への支持が高いかがわかります。
ヨーロッパで人気の日本車メーカーと車種
アメリカやオーストラリア、東南アジアなど、世界の多くの国・地域で大きなシェアを占めている日本車メーカーですが、名だたる自動車メーカーを数多く有するヨーロッパでは、やはり日本車メーカーのシェアが小さい国が多いのでしょうか。
2021年1~11月のヨーロッパ全体の新規販売台数ランキングによると、日本車のシェアは約15%。その中で最も売れた車が「トヨタ ヤリス」(16万5961台)。
日本では2020年2月までヴィッツとして販売されていた車種ですが、ヨーロッパでは元々ヤリスの名前で売されていました。2021年に「ヨーロッパ カー オブ ザ イヤー」を受賞し、日本車で初めて月間新規販売台数1位を獲得するなど、ヨーロッパで最も成功した日本車の車種と言える存在です。
また、他国では近年のブームや走行性からSUV、実用性からピックアップトラックが人気の日本車ですが、ヨーロッパは日本同様、狭い道路や駐車場が多いことから、コンパクトカーが支持を集めていることもヤリスが人気である一因だと言えます。
それでは国ごとの日本車のシェアや人気のメーカー、人気車種について見ていきましょう。
ドイツ
フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMWと世界中で愛される自動車メーカーの揃うドイツでは、トヨタでもシェアが3%にとどまり、日系メーカーのシェアは合計でも10%以下となっています。
そんな日本車のシェアが低いドイツにおいて、販売台数の多い日本車の車種としては、ヨーロッパ全体と同様「トヨタ ヤリス」で、直近の2023年1月度の新車販売台数では11位となっています。
新車販売では人気が高いとは言えない日本車ですが、旧車には一定の人気があり、数年前にはブームとなっていました。
「ワイルドスピード」などの数々の映画で日本の1990年代の車が登場し、「三菱 ランサーエボリューション」や「日産スカイライン 2000 RS-X ターボC」などのスポーツカーに人気が集まりました。
フランス
プジョー、ルノー、シトロエンなどの自国メーカーを有するフランスでは、これらのメーカーが圧倒的なシェアを誇り、全体的には欧州メーカーが人気となっています。
日本車のシェア率はトヨタのシェアが6.5%あるほかは、日産がわずかなシェアを占める程度となっています。
そんななか、2022年の新規販売台数としては、トヨタの「ヤリス(11位)」と「ヤリスクロス(13位)」がランクインしており、ヨーロッパでのヤリスシリーズの強さが伺えます。そのほか日産のキャシュカイも人気です。
イタリア
フェラーリ、ランボルギーニ、アルファロメオなど、高級車メーカーが多いイメージのイタリア。自国メーカーの大衆車といえばフィアット以外はないイタリアにおいて、シェア率は比較的さまざまなメーカーにばらけています。
やはりシェア率1位は自国メーカーのフィアットになりますが、2023年10月度の販売台数ではトヨタ車が2位に食い込んでいます。そのほか、スズキ、日産、マツダなど日本車メーカーも一定数売れています。
人気車種としてはドイツ同様、2022年の新規販売台数は「トヨタ ヤリス(8位)」、第9位に「トヨタ ヤリスクロス(9位)」がランクイン。特にトヨタ ヤリスクロスは、前年比250.6%と大幅な売上アップとなっています。
イギリス
イタリア同様、ロールスロイス、アストンマーティン、ジャガー、MINIなど、自国メーカーがMINI以外大衆車メーカーではないイギリス。圧倒的なシェアの自動車メーカーはなく、ドイツ車メーカーのシェアが約45%を占めるのに次いで、日本車メーカーのシェアが約15%と多くなっています。
車種別の2022年の新車販売台数としては「日産 キャシュカイ」が1位となっています。つまり、実はイギリスで一番売上の多い車は日本車だというので意外ですね。
また、イギリスで年々人気が高まっているEV(電気自動車)でも、新車販売台数第5位に「日産 リーフ」がランクインしています。
ハンガリー
特筆すべきはハンガリー。ハンガリーは自動車製造工場が多く、近年では欧州のEV自動車製造の拠点と言われるほど自動車産業大国です。
メーカーとしては、ベンツやBMW、フォルクスワーゲンなどの欧州車をはじめ、日本車ではスズキの自動車製造工場やデンソー部品の製造を行っています。
そのため、自動車大国のヨーロッパにおいては珍しく日本車のシェア率が高く、シェア1位がスズキ、2位がトヨタとなっています。
しかもスズキは2016年から7年連続シェア1位という圧倒的人気。1989年、冷戦が集結して共産時代が終わり、ハンガリーに最初に進出した自動車メーカーがスズキだったという歴史から、ハンガリーではスズキの車が国民的に親しまれています。
車種別の2023年1~9月の新車販売台数についても、第1位「スズキ S−CROSS」、第2位「スズキ ビターラ(日本ではエスクードとして販売)」、第4位「トヨタ カローラ」となっており、日本車が上位を独占していることがわかります。
そのほかの国
そのほか、自国メーカーに圧倒的な売上を持つ自動車メーカーがない、もしくは自国の自動車メーカーがないヨーロッパの国は、日本車メーカーのシェアが意外と高くなっていることもあります。
例えば、スペインではトヨタやレクサスがシェア2位となっています。
ヨーロッパの交通事情や日本車事情について見ていきましたが、いかがでしたでしょうか。世界を代表する自動車メーカーが数多くあり、「日本車は人気がない」と言われることの多い地域ですが、車種や国によっては日本車も高い支持を集めていることがわかりました。
ヨーロッパでは強くEV化が推進されていたことから、EV自動車の生産に強くない日本車メーカーは劣勢になると懸念されていました。
しかし、今年に入ってEUが2035年以降にエンジン車の新車販売を禁止するとしていた方針を転換。これにより「脱二酸化炭素排出のためには、EV以外にハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)など、様々な選択肢がある」との見方が強まり、HVなどに強い日本車にも追い風が吹いたと言えます。
今後、日本車がヨーロッパで躍進できるか、引き続き注目する価値がありそうです。